ヨシ、次に買う辞書は『大渡海』だ:舟を編む(三浦しをん)

この話いいなぁ~。

言葉を紡ぐ小説家を生業としているしをんさんの
言葉への、辞書への愛が詰まった一冊となっております。

章ごとにかわる語り手。
視点が変わることにより
同じ人物でもまったく違った角度でみえてきたり
画一的にしか捉えられなかったキャラに隠されていた思いが伝えられたり。

嗚呼、久々にオモシロイ小説を読みました!

意外に熱血展開で
製紙会社とのやりとりには涙を禁じえませんでした。

というのも、ワタクシ、辞書には思い入れがありまして
忘れもしない小学校3年生のとき。

親に「辞書(子供用に非ず)がほしい」とおねだりして
ようやく説得してクリスマスプレゼントに買ってもらえることになり
本屋に赴いたところ…

いわゆる“町の本屋さん”だったんですが、そこのおばちゃんに
「小学生にはまだ早い」と売ってもらえず
小学生用の辞書を買わされた苦い過去があるんです!

一度は説得できた親まで
「確かに小学生には小学生用のほうが…」
と言い始めた時のあの悔しさ!!

欲しくもないイラスト入りのカラフルなお子ちゃま用の辞書を
手に入れた時の不満げな顔は過去最高だったのではないでしょうか。

なんでそんなに“大人用”の辞書に執着したかというと
『舟を編む』でいうところの「ぬめり感」に魅せられたからなんです。


辞書って紙が薄くて独特の風合い、手触りがあるじゃないですか。
それにあんなに薄い紙なのに裏写りしない素晴らしさ。
それが気に入っていたからなんです。

ごめんよ、別に勉強したいから欲しかったわけじゃないんだ。
と、こんなところで親に白状してみたり(笑)
このブログ読んでないけどさ~。

いや、普通に調べ物をするのはそのころから好きだったから
本来の辞書としての必要性もあったんですけどね。

そして、この紙フェチっぽいのは現在も若干…

講談社文庫の紙は劣化が激しくて保存に困ります。
が、同じ講談社のホワイトハートは同じ保存場所でも
いい感じでとても重宝しています。
『十二国記』は全巻初版で持っていますが未だにキレイ。
ただ、紙質はあんまり好みじゃないんですけど。ぬめり感がなくて(笑)

そんな思い入れのある辞書用の紙をいかに開発するか
ということも語られて個人的にテンション上昇しっぱなし!
ここまで心血を注いで作られるとは…

以前
“広辞苑の製本機で製本できる厚さの限界は決まっているが
1度収録した言葉を削除せずに
改訂のたびに増える新語をどのように収めているか”

という問題で

紙の厚さを薄くする!

と即答(&正解)した私ですが
まさかそれがこんなに大変だなんて!!
あけぼの製紙のみなさまの努力には頭が下がります。

そして『大渡海』に携わるすべての人々に感動!
馬締・荒木・西岡・佐々木・岸部
アルバイトの面々。
ワタシも“地獄の神保町合宿”に参加したかったよ(物好き)

視点のかわる本書にて揺るがず話の中心にいるのが辞書『大渡海』
そうか、この話は辞書が主役なのだな。
そう了解して読み進めていたのですが
実は影の主役ともいえる人物が隠れていたのです。

それが松本先生
最初から一定の存在感は示していながら
決して出しゃばらなかった先生。
いついかなる時も“用例採集カード”を手放さなかった先生。

そういえば松本先生視点の物語がない…っ!

まぁ、玄武書房の社員ではないからしかたないと言えばそれまでなんですが。
先生の志は荒木・馬締(そしておそらく岸部)に
受け継がれているから改めて描かれなかったのでしょう。

最後に。
この本の装丁にはある仕掛けがされています。
本文に書かれているんですが
それに気づいたときまたもや感動してしまいました。
いろんな角度で楽しめて至れり尽くせりだな、この本は。
満足!


舟を編む舟を編む
(2011/09/17)
三浦 しをん

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まるあ

Author:まるあ
100%趣味について。
観劇と映画鑑賞と読書が趣味。歌舞伎・三谷幸喜作品・蜷川幸雄演出・劇団☆新感線などを観に行きます。
読書はいろいろな人の感想を参考にマンガも含めて乱読中。

一個人の主観的な感想なので大多数がそう感じるとは限りません。
内容も正確を期していますが記憶を頼りにしているので必ずしも正確ではありません。
以上を了承のうえお読みいただけると幸いです。

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